こんにちは、オイジーです。
先日、素晴らしいワインを見つけたんですね。
それが、こちら。
「キアラ・コンデッロ」という造り手の
「プレダッピオ・サンジョヴェーゼ」というワインと・・・


こちらの「レ・ルッチョーレ」というワインです。


非常にピュアで良いワインなんですが・・・
気になったのが、この「レ・ルッチョーレ」。
透明感あふれる赤い果実のエキスが綺麗に出てて、
かなりブルゴーニュのワインに似ている・・・
しかもシャンボールを想起させるスタイルなんです。
また「プレダッピオ・サンジョヴェーゼ」も2022ヴィンテージから新たに石灰土壌を手に入れ、
元々のジューシーさにエレガントさが加わり、これまたすこーしブルゴーニュ的なスタイルに近づいた・・・と感じたんですね。
なぜなのか?
・・とテクニカルや現地情報を見ていると、どうやらこのエミリア・ロマーニャ特有の
「スプンゴーネ土壌」
に秘密があるようだぞ・・・ということがわかったんですね。
スプンゴーネの語源
語源フェチのオイジーはまずはいつもの通り、言葉の成り立ちから迫っていきます。
「スプンゴーネ(Spungone)」という名前はどうやら、方言語「spugnò(スプニョー)」や「spungò(スプンゴー)」が変化したもののようですね。
その意味とは、
「スポンジのような見た目」
から来ている、という説が濃厚なんです。
おや?
これはかなり手がかりになりそうな情報だぞ・・・
スポンジのような見た目の岩石
どうやらスポンジのような見た目の岩石は、
「貝殻などの粗い粒子が、石灰質のセメントで固められた構造」の
特殊な石灰質砂岩のようです。
石灰岩で有名な地域といえば・・・
ブルゴーニュですね!
しかも似ていると感じたシャンボールといえばなおさらです。
おっと、エミリア=ロマーニャとシャンボールがリンクしたぞ・・・
スプンゴーネ土壌とは?
スプンゴーネが特殊な石灰質砂岩だということはわかりました。
さらにその詳細を調べていくと・・・以下のことがわかりました。
スプンゴーネ土壌は、
イタリア・エミリア=ロマーニャ州の一部、
特にプレダッピオやベルトリなどを中心に広がる、
非常に限定的な地域に存在する石灰岩土壌。
この岩は、この地域周辺の丘陵を形作っているようです。
スプンゴーネは貝殻などの粗い粒子が石灰質のセメントで固められた構造をしており、
約300万年前(中新世後期〜鮮新世中期)、
「浅い海の堆積物」
として形成されました。
これらは当時のロマーニャに存在した地殻の高まりの上に堆積したものです。
約300万年前、この地域は海の底でした。そこに堆積した貝殻やサンゴ、微生物の死骸などが固まり、今のような多孔質(スカスカ)な軽い石灰岩になったのがスプンゴーネです。
実際、手に取ると貝殻の形がくっきり見えるほど。ワイン畑を掘るとバキバキと貝殻が出てきます。(実際にキアラもインスタに畑から出てきた貝殻の写真をアップしていました。)
このスプンゴーネ層は、フォルリ地方を中心に、南北約30kmほどにわたって点在的に広がっているといいます。
スプンゴーネはどんな用途に利用されていた?
スプンゴーネは簡単に崩れるほどもろい一方で、硬さも持っています。
また見た目だけではなく、
加工のしやすさからも「スポンジ岩」と呼ばれていたそうです。
入手も容易だったため、
古くから建築資材として使われてきました。
橋・家・水車石などに利用され、特別な炉で焼いて工業原料にもなっていたようです。
スプンゴーネはブドウ栽培にどんな影響を与えた?
そんなスプンゴーネはブドウ栽培にどんな影響を与えたのでしょうか?
・土壌が軽く、水はけが非常に良い
・根が深くまで伸びやすく、ブドウがストレスを感じにくい
・石灰岩由来のミネラリティをブドウに与える
という、まさにワイン用ブドウ栽培に適した特徴を持っていたんですね!
その結果としてワインの味わいには
・石灰質由来の透明感あるミネラル感と、繊細な酸をワインに与える
・エレガンスとフレッシュさが際立つスタイルになりやすい
という特徴がある、と言われています。
じゃあ、ブルゴーニュの石灰岩って?
ブルゴーニュ全体(コート・ドール、シャブリ、マコネ、シャロネーズなど)は、
ジュラ紀(約1億6千万年前)の石灰岩
がベースになっています。
スプンゴーネは約300万年前ですから、
ブルゴーニュの土壌は
遥かに古く、
深く、
圧縮されて硬くなった石灰岩
なんですね!
つまり
「年代が全く違う」
ということになります。
ブルゴーニュの石灰岩は貝殻由来であることは間違いないけど、顕微鏡レベルでないとその痕跡は見えないくらいだと言います。
スプンゴーネが貝殻が手に取れるくらいなのに対して、年月による形状の分解され方は段違いです・・・
ブルゴーニュの石灰岩が、より土壌と一体化していることが分かります。
ブルゴーニュの土壌の特徴
そんなブルゴーニュの土壌の性質をまとめてみました。
・石灰岩 + 泥灰岩 + 粘土のミックスが多い
・硬質で重みのある岩盤(土壌の掘削が大変)
・土壌構成が区画ごとに非常に細かく異なる(いわゆるクリマ)
・ダイレクトなミネラル感というよりも構造やフィネスに影響することが多い
だから、ブルゴーニュのピノ・ノワールやシャルドネは、
優美で、繊細で、花のようで、でも内に芯がある
ということなんですね。
共通点と、違い。
項目 | スプンゴーネ | ブルゴーニュの石灰岩 |
---|---|---|
由来 | 約300万年前の海の堆積物 | 約1億6000万年前のジュラ紀の海洋性堆積物 |
見た目 | 貝殻くっきり、手で割れる軽い岩 | 硬くて重い岩、化石は目に見えない |
水はけ | 非常に良い | 良好だが、粘土の混在によって変化 |
ワインの特徴 | 明るく繊細、酸が立ちミネラリー | フィネスがあり、奥行きとバランス重視 |
まとめ
どちらもエレガントなワインを造る石灰岩土壌で、であることが分かりました。
でもスプンゴーネは
300万年前の、貝殻の形が残る、石灰岩土壌
に対し、ブルゴーニュは
1億6千万年前の、もはや貝殻の形すら残らない、石灰岩土壌
だということがわかりました。
これこそ「土壌はワインを語る」を表す一例ですね。
味だけじゃなく、その背景を知ると、もっとその一杯が特別になります。
さらにこの辺りを理解しておくと・・・
ブラインドテイスティングでも、正解に近づけるかもしれませんね!
ぜひスプンゴーネ土壌の素晴らしいワインを試してみてください!
ではまた!
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